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福島地方裁判所 昭和47年(ソ)2号 決定 1972年2月02日

抗告人(原告) 古山兵吉

右訴訟代理人弁護士 堀切真一郎

相手方(被告) 紺野恵子

右訴訟代理人弁護士 土屋芳雄

同 今泉圭二

同 大河内重男

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

抗告代理人は、「原決定を取り消す。本件補助参加の申出を却下する。」との裁判を求め、その理由として次のとおり主張した。

原裁判所は、昭和四六年一二月二三日、前記当事者間の同庁昭和四六年(ハ)第九四号土地明渡等請求事件について、相手方のした補助参加の申出を許可する旨の決定をした。しかしながら、補助参加が許されるためには、補助参加人となるべき者が他人間の訴訟の結果につき利害関係を有することが必要であるところ、本件相手方は、抗告人と被参加人となるべき紺野豊雄との訴訟の結果について法律上の利害関係を有しないし、また、原裁判所の前記土地明渡等請求事件では、右紺野豊雄と共同被告にされており、したがって、被告の立場で補助参加人がなし得る一切の訴訟行為をなし得るのであるから、相手方には右紺野豊雄に補助参加をすることの利益がない。よって、本件補助参加の申出を許可した原決定は取り消されるべきである。

そこで、本件抗告の理由について検討してみる。補助参加が他人間の訴訟の結果について利害関係を有する場合にのみ許されるものであることは、抗告代理人主張のとおりであるが、ここにいう訴訟の結果について利害関係を有するとは、本案訴訟で判断される訴訟物たる権利関係について利害関係をもつことをいうのであるから、自己の私法上または公法上の地位に法律上何らかの影響を受ける地位にあればよいのであって、本案訴訟の判決の効力が及ぶ場合であるか否かは直接関係がなく、参加人の実体法上の地位が訴訟物たる権利関係の存否に依存しており、その判決の訴訟物についての判断が実体法上の観点から参加人の法律上の地位に影響を及ぼすときは、訴訟の結果に利害関係を有するものといわなければならない。けだし、判決により訴訟物たる権利関係の存否についての判断がなされた以上、この権利関係に依存する法律上の地位にある者が、既判力等の訴訟法上の効力を受けないとしても、事実上の影響は大きいのであり、右権利関係の存否について自己に有利な判断を受けることが望ましいことは否定しえないことであるからである。

ところで、一件記録によれば、原裁判所に係属中の前記訴訟は、抗告人が本件土地所有権に基づき、紺野豊雄に対し、建物を収去して本件土地の明渡しを、相手方に対し、右建物から退去することを求めているものであり、これに対し、紺野豊雄は本件土地の前所有者からこれを賃借し、その地上に建物を所有しており、相手方も右建物を賃借しているので、いずれも本件土地および建物を占有するについて正当の権原を有する旨主張し、抗告人の右請求を拒絶していることが認められる。したがって、相手方の右主張を理由あらしめるためには、その前提として紺野豊雄が本件土地を正当に占有し得ることが必要であるから、同人が本件土地について賃借権を有するか否かは相手方の地位に法律上影響を及ぼすことが明らかであって、相手方は、抗告人と紺野豊雄との間の訴訟の結果に利害関係を有するものといわなければならない。

次に、抗告代理人は、相手方は共同訴訟の被告の地位にあるから、その地位に基づき補助参加人がなし得る一切の訴訟行為をなし得るので、相手方には補助参加を認める利益がない旨主張するが、原裁判所に係属中の前記訴訟は通常共同訴訟であって、紺野豊雄と相手方との間に補助参加関係が当然生ずるわけではなく、共同訴訟人独立の原則が働くので、共同訴訟人相互間においては原則として何ら関係がなく、それぞれ独立にその相手方に対する訴訟を追行するのであって、いわゆる横の証拠共通の原則によって相手方の提出にかかる証拠原因を抗告人と紺野豊雄との間においても作用させうるほかは、共同訴訟人の一人について生じた効力は他の共同訴訟人に影響を及ぼさないから、たまたま共同訴訟人となっているからといって、補助参加人の地位にあると同様に他の共同訴訟人を補助し、これを勝訴させることによって自己の利益を守ることはできない。のみならず、補助参加をしない以上、紺野豊雄と相手方との間いわゆる参加的効力を生じさせるすべがないのである。したがって、法律上許される最大限に自己の利益を守るためには他の共同訴訟人に補助参加をする必要があり、共同訴訟人の立場にあることを理由に補助参加の利益を否定することはできないといわなければならない。

以上の次第で、本件抗告は理由がなく、本件補助参加の申出を許可した原決定は相当であるから、民事訴訟法第四一四条、第三八四条第一項により本件抗告を棄却し、抗告費用の負担については同法第九五条本文、第八九条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 丹野達 裁判官 新田誠志 石井彦寿)

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